e-Bike の一般情報(2018 は e-Bike 元年)

                 ・電動アシスト自転車の規格
                 ・e-Bike の本命はMTBか?
                 ・クロスバイクタイプとロードバイクタイプ
                 ・e-Bike のココに注意 と ・ココがスバラシイ
                 ・プロのロードレーサーによる e-Bike の評価
2018年は電動アシストスポーツバイク(e-Bike)元年でした(この情報は2018年春頃のものです)

本格的な電動アシストスポーツバイク(e-Bike)が日本で発売されたのは、2015年のヤマハYPJ-Rと、翌年のヤマハYPJ-Cです。それから2年経った2017年の秋、いきなり海外勢を含めた多数のメーカーが e-Bike の市場投入を発表し、年が明けた2018年が事実上の e-Bike 元年になりました。

先行して発売されたYPJ-Rは、ドロップハンドルに105コンポを装備したアルミフレームのロードバイクをベースとしており、コンセプトとしては重量を考慮して2.4Ahの小さいバッテリーを積み、「通常はノンアシストで走り、発進や坂登りなどでアシストを使う」ことを想定しています。従ってフルアシストで走れる距離は14kmにすぎません。
またYPJ-CはストレートハンドルにSORAを装備したクロスバイクで、重量は15.4kg/16kgと e-Bike としてはかなり軽量です。

 YAMAHA YPJ-R  105、25C、2.4Ah、15.4kg   YAMAHA YPJ-C SORA、28C、2.4Ah、16kg  
この初めての e-Bike・YPJ-Rは、発売後ロードバイク乗りと自称する人々からどちらかと言うと否定的な評価を受けましたが、そこそこ売れていたところを見ると日本でもある程度の需要があったようです。そこで期待を込めて試乗をして見ましたが「なんとなく中途半端で、購入するのはどうかな」という感じを受けました。

それは「通常はノンアシストで走り・・・」というコンセプトが、7〜8kgのノーマルバイクを走らせている眼から見るといかにも重く、例えれば「なんちゃってロードバイク(ロードバイク風チャリ=ルック車)」のように思えるのです。アシストを入れれば確かに軽くなるのですが、走れる距離が14kg(アシストモードMAX)では使えナイナ、というのが正直なところです。

YPJ-R発売の翌年に発売されたYPJ-Cは2X9Sのクロスバイクタイプで、それほど速くないスピードで巡航し、発進と坂道だけアシストを使う、というコンセプトに一応合致しているように思えます。しかしこれも試乗した感じでは結構固く(フロントフォークはアルミ)、全体にエントリークラスレベルのように思えました。
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○電動アシスト規格

日本の電動アシスト規格によるアシスト量の大きさは、
右図に示すように時速0〜10km/hまで人の力に対して
200%、そこから24km/hまでに減少することとなって
います。


従って17km/hでちょうど100%になりますから、この
アシスト量をスプロケの歯数の増加に換算すると2倍に
なります。


これは、例えばノンアシストバイクを14Tで回している
とすると、アシストは28Tを回しているのと同じこと
(軽い!)になると思います。

しかし e-Bike は、総重量がフツーのロードバイクに比べ2〜2.5倍程度(ホイールは1.5倍?)あることを考えれば、その分を割引いて3〜4枚ほど重い19T相当の軽さになるのでしょう。

これを速度の増加について同じように考えていくと、大体21km/hあたりで同程度の「歯数」となり、それ以上ではむしろ e-Bike の方が重くなると考えられます。結局アシストが効いているナ〜と思われる最大速度は19〜20km/hぐらいまでで、ロードバイクの巡航速度であるそれ以上の速度域では重いバイクになるものと思われます。

このことから、 e-Bike は主に常用速度が遅いMTBやクロスバイクであればメリットがあるものの、早く走ることがその目的のロードバイクには向かないのではないか、と考えられます。つまりシニアは別として、30km/h以上で走ることがフツーな若いローディー(若くなくても)には縁のないバイクなのでしょう。
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○ e-Bike の本命はMTBか?

日本での電動アシストの規定より、スピードが遅い状況で負荷が軽くなる効果が際立つのは、フレーム、ホイール・タイヤが重くなるが、不整地の坂をブロックタイヤとサスペンションで駆け上がるMTBです。このような理由から、まず各メーカーからフロントフォークにサスペンションを装備した 電動アシスト・ハードテイルがどっと発表されました(この情報は2018年春頃のものです)。

PANASONIC XM1 SLX 10S、8Ah、21.8kg  MIYATA RIDGE-RUNNER DEORE 10S、14Ah、21.3kg
 YAMAHA YPJ-XC SLX 11S、13.3Ah、21.2kg        BESV TRS1  SLX 11S、14Ah、18kg  
これらのモデルは何れも27.5インチのブロックタイヤに油圧ディスクブレーキを装備しており、不整地の坂登りに要求される体力が無いシニアでも傾斜地を軽々と駆け上がり、また安定した制動をかけて駆け下りることができそうです。またデザインやカラーリングがカッコ良く、これで街中を走っていれば目立つこと間違いないと思いますが、価格は35万~43万とそれなりに高いので、よ〜〜〜く考えないと中々購入には踏み切れないのではないでしょうか?
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○クロスバイク(フラットバーロードを含む)とロードバイクタイプ(ドロップハンドル)

2017年秋にはヤマハやパナソニックのように、従来から e-Bike バイクを販売していたメーカーとは別に、電動アシストユニットをパーツとして車体メーカーに供給するシマノのSTEPSや、BOSCHのALP(日本向けにアレンジしたActiveLine Plus)が発表されました。これにより電動アシストユニットを自製しない多くのメーカーにより、供給されたユニットを搭載したバイクが発表されていますが、そのほとんどが一般的ニーズが多い通勤・通学や街乗りをターゲットとしたクロスバイクタイプの e-Bike です(この情報は2018年春頃のものです)。

これらのモデルのコンセプトはYPJ-R/YPJ-Cと異なり、常にアシストをかけて走行するため大容量の電池を搭載し、重量があっても長距離の走行が可能なことで、どのモデルも100km以上(最低アシストレベル)走行が可能としています。ただし価格帯は20〜30万円とMTBよりは安いものの、通学・通勤用として簡単に買える金額ではないと思います。

 YAMAHA YPJ-EC SORA、13.3Ah、35C、19.6kg  MIYATA CRUISE  ALVIO、11.6Ah、28C、18.7kg
  TREK Verve+  ALVIO、8.2Ah、42C、18kg        BESV JF1  DEORE、7Ah、28C、16.1kg
またモデルとしては少ないのですが下図に示すようなロードバイクタイプも発表されています。ここでヤマハ・YPJ-ERはYPJ-Rとコンセプトが異なり、太い35Cのタイヤを履いて常にアシストをかけた比較的遅い速度で走行する使い方を想定しているものと思われます。

またBESV(ベスビー)・JR1 のコンセプトは、YPJ-Rと同様に重量を抑え105コンポと25Cのタイヤを履くロードバイクを指向したモデルですが、軽量化と常にアシストをかけた長距離走行を両立させようとしている点が異なります。またBESVは電池がダウンチューブと一体化されているようなデザインになっていること、アシストが他のユニットのようにクランクではなく後輪である(アシスト効率が良く軽量になる)ことが他のモデルに見られない特徴です。

  YAMAHA YPJ-ER Tiagra、13.3Ah、35C、19.6kg            BESV  JR1     105、7Ah、25C、15.7kg
各メーカーのアシストユニットは2018年現状で大体次の様になっています。
 ・メーカーオリジナル ・・・  ヤマハ、パナソニック、BESV
 ・シマノ STEPS   ・・・  ミヤタ
 ・BOSCH        ・・・  トレック、海外メーカー
なお日本では発表されていませんが、GIANTはヤマハのユニットを使っているようです(2019年初頭に発売)。

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○e-Bike のココに注意

以上のような e-Bike のモデルを見ると、シニア層がサイクルライフを楽むツールとして欲しくなるのは人情ですが、良く考えてみるとロードバイクの主流である7〜8kg台のカーボンフレームバイク(ノーマルバイク)に比べ、注意すべき点がいろいろとあると思います。

→ 重い(走行で)
電動アシストのユニットやバッテリーを載せているのだから重いのは当然ですが、それでも20kg近い重さはハンパではありません。もちろんこれだけ重くても、アシストがある範囲ではノーマルバイクと同程度に軽く走らせられると思いますが、それも速度が24km/h未満までで、それ以上はノーアシストの重いバイクになります。

また軽量化を図って行うノーマルバイクのようなホイール交換はまずできません。それは電動アシストのシステムの一部であるスピードセンサがホイールに組み込まれているため、今までの様に軽量のホイールにグレードアップということが原則できません。

→ 重い(とり回し)
ママチャリを想定すればすぐわかると思いますが、この位重いと結構とり回しがヤッカイで、特に置く場所が2階以上だと持ち上げるのが結構大変(まず無理)です。またクルマに積むのもヨッコラショとなり何とかはなると思いますが、肩にかけて運ぶ輪行は99%無理でしょう。従って走るコースは自宅から走れる範囲か、クルマ&ライドになると思います。

→ e-Bike は「電気製品」なのでカスタマイズできない
電動アシストのユニットはモーターとこれを制御するコンピュータ、センサ、メーターの統合された電気製品です。
従ってまず「改造」は不可能です。仮に知識があっても一旦手を加えれば「製品補償」が効かなくなります。電気製品は高い確率で故障しますから補償は必須なので、結果今までのロードバイクのようにカスタマイズができないことになるでしょう。可能なのはせいぜいタイヤの交換かハンドルの換装ぐらいでしょうか?
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○e-Bike のココがスバラシイ

前項で e-Bike をケナシテおいて、逆にホメるのも変ですが、e-Bike にもスバラシイ点があると思います。

→ 太いタイヤを履いても走りは同じ
ロードバイクでは23/25Cのタイヤが一般的ですが、クロスバイクなどの28C以上のタイヤと比べると路面の影響を受けやすくなるため乗り心地がイマイチで、その結果長く走ると疲労も多くなります。また空気圧は7〜8ata以上なので、そのままでも自然に抜けていくため、走る前には必ず空気を入れる必要があります。

そこでタイヤを28C以上にすると乗り心地は驚くほど良くなり、また適正空気圧も低いため抜け方は少なく、空気を入れる面倒さも軽減されます。しかし走りは重くなり、漕ぎ出しのモタモタは避けられなくなります。

しかし e-Bike では、タイヤを太くすることによる走りの重さと漕ぎ出しでのモタモタは(当然ですが)アシストでキャンセルされます。太いタイヤで乗り心地が良く、かつ軽やかに走れることはノーマルバイクにはできない相談です。
(現在のところMTBタイプでない e-Bike のフォークは全てアルミですが、35Cから〜50C()と太いタイヤを履いているモデルが多いのは、振動軽減による乗り心地も考慮しているのではないかと思われます)

→ 総重量を気にしないですむ
ロードバイクに乗り始めると、自分の体重も含め総重量の軽減に血マナコになり、少しでも軽くするために、コンポを初めとした部品の軽量化を(体重も含めて)、それこそグラム単位でお金をかけることになりますが、e-Bike ではその必要がありません。そもそも初めから20kg程度の重い車体です。その重い車体が軽く動く訳ですから、総重量を減らすことの意味がそれほど重要ではなくなり、逆にツーリングなどでの重い荷物もヘッチャラです。

→ ロードバイクに特有のストイックな世界からエスケープできる
ロードバイクに乗り始めると、人力を最大限に効率よく消費するため、かなり広い範囲に知識を広げ、また工夫を重ねることになります。それ自体はおもしろく、またロードバイクの楽しみでもあるのですが、その努力の多くは電動アシスト・システムの前では不必要・無関係になります。前項の重量についてはその典型的な例ですが、それ以外でも「ロードバイクの教え」の呪縛から逃れられることが可能であると思います。

結局のところ、ドロップハンドルが付いていてもノーマルのロードバイクとは違う「自転車」なのだと思います。

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〇プロのロードレーサーによる評価

webで見られる e-Bike の評価記事は、ほとんどがスポーツ自転車に乗ったことが無い人のものが大半で、ロードバイクを知っている人の評価を見ることがありませんでした。そんな時、コレダというプロのロードレーサーのブログに書かれていた記事がありましたので抜粋して紹介します。多分これが e-Bike 評価の決定版だと思います。

自転車に長時間乗っていると、頑張らなければならない状況(上り坂、向かい風)に必ず出会うが、これらは高齢者にはある意味での過負荷状態となる。高齢者でなく普段から鍛え上げている人でさえ、ライドの前半に自分の能力を超える様な過負荷を身体にかけてしまうと、それ以降ライドが終わるまでずっと回復しないことがある。

もし e-Bike により一時的に生じる過負荷状態のみを避けられれば、負荷がそれほどかからない快適なところだけを走ることになるので、一日中楽しんで自転車に乗ることも可能となるだろう。つまり、e-Bike は長時間ライドが可能になるので、結果的にノーマルバイクよりもむしろ良い運動になると思われる。

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